日本の美。阿波踊りに見る、直線と曲線の融合
更新日:8月31日
8月。
徳島市で開催される約400年の歴史を持つといわれる阿波踊り。
前夜祭を含め5日間、街全体が踊りの熱気に包まれる夏の一大行事。
以前から一度は訪れてみたいと思っていました。
阿波踊りを見るために何より大変なのが宿の確保。
毎年なかなか予約が取れず、これまで行く機会を逃していましたが、今回ようやく念願が叶いました。
映像では分からなかった、それぞれの「美」
InstagramやYouTubeなどで見る阿波踊り。
しかし、実際に目の前で見ると印象は、それとは全く違いました。
阿波踊りでは、踊り手のグループを「連(れん)」と呼びます。
非常に興味深いのは、その連ごとに踊りが全く違うこと。
踊りのテンポ、手足の動き、表情、隊列。
同じ阿波踊りでありながら、それぞれに個性があり、次々と見ていても飽きることがありません。
そして、ファッションに携わる私が自然と目を奪われたのは、やはり「衣装」でした。
連によって浴衣や法被の色、柄、組み合わせもさまざま。
衣装そのものが、それぞれの連の個性を表現しているように感じます。
中でも、ひときわ華やかな存在が「女踊り」です。

女踊りに見る、日本独特の造形美
深くかぶった編み笠。
色とりどりの浴衣。
手を高く上げ、指先までの美しい所作。
袖口からのぞく腕には手甲(てご)があり、裾をからげた浴衣の下からは裾よけが見えます。
通常の和装では内側に隠れる裾よけを、阿波踊りではあえて見せる。
それもまた、踊りの衣装ならではの美しさなのでしょう。
そして、しばらく女踊りを眺めているうちに、あることに気づきました。
直線と曲線の絶妙で美しい融合です。
浴衣そのものには、日本の衣服らしい端正な「直線」があります。
そこに、編み笠が描く優美な「曲線」が重なる。
さらに踊りが始まると、高く伸ばした腕や指先、しなやかな身体の動きによって、静止していた衣装の直線に新たな曲線が生まれていきます。
直線だけでもない。
曲線だけでもない。
異なる線が互いを引き立て合うことで、凛とした美しさと女性らしい柔らかさが同時に生まれる。
そこに私は、日本独特の美意識を感じました。
美しい装いは、人が身につけて完成する
これは、スーツやジャケットにも通じるものがあります。
美しい服とは、服だけを眺めて完成するものではありません。
肩から胸へ流れるライン。
ウエストから裾へ続くライン。
袖から手元へつながるライン。
そこに人の身体が入り、歩き、腕を動かし、佇むことで、初めて服に生命が宿ります。
阿波踊りの女踊りも同じでした。
浴衣、編み笠、手甲、裾よけ。
一つひとつを見るだけでは分からない美しさが、踊り手の身体と所作によって一つになった瞬間、圧倒的な美しさとなって目の前に現れる。
ファッションを考えるうえで、大切なのは「何を着るか」だけではありません。
その服を、その人がどう纏うか。
そして、直線と曲線、静と動、衣服と人。
異なるものが美しく調和したとき、その人にしか表現できないエレガンスが生まれるのだと思います。
400年もの間、受け継がれてきた阿波踊り。
その華やかな女踊りを眺めながら、改めて日本の装いが持つ美しさに心を奪われました。
美しさとは、飾ることではなく、あらゆることが調和すること。
BELLFORAが一着を仕立てるときにも、大切にしていきたい美意識です。
皆さまも、ぜひ一度、阿波踊りに行かれてはいかがでしょうか。





