秋冬の生地から考える、これからのスーツ
更新日:9月18日

きちんと感と自分らしさの間で
秋冬の新しい生地サンプルが届きました。
毎シーズン、生地を一枚一枚眺める時間は、とても楽しいものです。
近年、特に感じるのが「色」の変化です。
ネイビー、グレー、チャコールといったスタンダードな色はもちろんですが、それだけではありません。
深みのあるグリーン、軽やかなのブラウン、少しくすみを持たせながらも艶を感じるブルーなど、以前に比べて色の選択肢が随分と豊かになりました。
常に、生地ブランドによる新しい表現への挑戦があり、また染料・染色技術の進歩があります。
しかし、変わったのは生地だけではありません。
私たちの働き方、そして価値観そのものが大きく変わりました。
「スーツか、カジュアルか」ではなくなった
テレワークが社会に認知されて、スマートフォン一つで、気軽に国内外へ行ける様になりました。
そして、働く場所、働き方も多様になりました。
以前のように、キッチリ着る必要がない気がするし、だからといって、カジュアル過ぎて良い訳でもない。
実際、お客様との会話の中でも、こんなお話をよく耳にします。
「オフィスカジュアルは楽だけれど、やっぱり“きちんと感”は欲しい」
「自由になった分、何を着ればいいのか分からなくなった」
「普通のスーツは何着も持っているので、きちんとしながらも、遊び心が何処かにあって、心身共にリラックスできる。そんなスーツが欲しい」
服装が自由になった今だからこそ、「どう装うか」を自ら考える必要が出てきています。
言い換えると、自分の人生を演出することが、今まで以上に求められてきています。
また、私自身の経験から”きちんと装うことは、心を整えることにもつながる”と感じています。
色だけではない。ディテールで表情をつくる。
そこを解決することが出来るものが、オーダーです。
例えば、今まで選ばなかった色の生地でスーツを仕立ててみる。
それだけでも新鮮ですが、さらに襟やポケット、ステッチなどを変えることで、一着の表情は大きく変化します。
ピークドラペルやセミピークラペルを選べば、胸元に華やかさや力強さが生まれる。
一般的なフラップポケットからアウトポケットに変えれば、ぐっと柔らかな印象になる。
ステッチの幅を少し広げたり、レールステッチを取り入れたりすれば、クラシックなスーツにも軽快な表情を加えることができます。
生地の質感、色、襟、ポケット、ステッチ。
それぞれは小さな選択です。
しかし、その組み合わせによって、端正にも、柔らかくも、華やかにもできる。
一着のスーツに、実に多彩な表情をつくることができます。
人は、細部に気づかなくても「感じている」
ここに、私たちはファッションの深さがあると思います。
例えば、相手が、
「この人はセミピークラペルで、ステッチ幅が広い」
と細部まで認識することは、ほとんどないでしょう。
けれど、
「なんとなく素敵だな」
「きちんとしているけれど、堅苦しくない」
「この人らしい雰囲気がある」
そんなふうに、人は全体から何かを感じ取ります。
わずかな色の違い。
襟の形。
ポケットのつくり。
ステッチの表情。
一つひとつは数センチ、時には数ミリの違いです。
しかし、その小さな違いの積み重ねが、その人の佇まいをつくり、やがて大きな印象の違いになっていく。
オーダースーツとは、単に身体のサイズに合わせて服を作ることではないと思います。
自分らしさを、仕立てる。
働き方も、生き方も、価値観も多様になった時代。
だからこそ、誰かが決めた「正しい服装」に自分を合わせるのではなく、
自分はどう在りたいのか。
人と会うとき、どんな自分でいたいのか。
そこから装いを考えてみてもいいのではないでしょうか。
きちんと感は欲しい。
でも、堅苦しくはなりたくない。
品格は大切にしたい。
でも、自分らしさも楽しみたい。
その一見相反するものを、自分らしく調和させる。
それが、これからの時代のスーツの楽しみ方なのかもしれません。
新しく届いた秋冬の色とりどりの生地を眺めながら、そんなことを考えています。
Tailoring, Your Life.
BELLFORAは、服を仕立てることを通して、その人らしい生き方まで表現できる一着をご提案していきたいと思っています。





